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攘夷と階級社会の崩壊
(2008-02-07)
中巻は、蔵六が長州藩の司令官に任命され幕軍を撃退するところで終わっています。
中巻で印象に残っている言葉が二つあります。まず一つ目は、蔵六の「日本中に攘夷という大発熱をおこさせる以外に、日本の体質を変える方法はないのではあるまいか」という言葉と、本書後半のほうで頻繁に使われるようになった「階級社会の崩壊」と言う言葉です。
この蔵六の言葉どおり、攘夷によって日本の体質は変わりましたが、この言葉は現在の日本にこそ必要だと思いました。政治家の汚職や、アメリカや、北朝鮮などへの弱腰外交を伝えるニュースなどを見ると強くそう思います。政治家、特に各省の大臣などにこの言葉を聞かせてやりたいです。
上巻のレビューにも書きましたが、いまこそ幕末の勉強をするべきです。そう思わされる作品です。歴史があまり好きでない人にも是非読んで欲しい作品です。でも、「いきなり長編はムリ」という人は短編集の「酔って候」等から入ることをお勧めします。
"時代"が必要とした男。
(2005-11-17)
村田蔵六こと大村益次郎は当初父の仕事である医師を継ぐため当時の先端であった
蘭学を学びます。
ただ蘭学を学び諸藩を転々としているうちに江戸に行き着き、世間の彼への期待
は医師ではなく兵学者としてのものに変わっていきます。
戦争で総司令につける程の人物はその国の歴史上何人もいるわけではない。
さらにそういった人物は武士などの職業についているわけではなく、百姓や商人で
あることも多く、実際選ばれることは少ない。村田蔵六はそういった意味では源義経と
同じく珍しい人物の一人です。源義経の場合は頼朝の存在がありましたが、蔵六は
時代が彼を必要としていたのでしょう。
当初は江戸幕府からの要請で江戸で鳩居堂という塾を開いたり、幕府の作った学問所
で教えたりしていましたが、やがて故郷長州藩の強い攘夷の流れに引き込まれ、
対幕府戦の総大将となり歴史の変革の大きな渦に巻き込まれていきます。
面白いのは村田蔵六という人物で、様々な知識があり人と多くの人と接してきている
にも関らず、政治力は全くといっていいほどなく、本人もそれおをわかっています。
そして自ら大将として赴いている戦いの停戦を結ぶ際にも、本人はその場に行かず、
政治に向いた人材を向かわせているところ。
ところどころで無骨だったり火吹き達磨と呼ばれる人間性を見せていたりしていて、
特に女性に対する考え方なども面白い点でした。
もうひとりの幕末の豪傑
(2005-01-05)
百姓から医者を経て,エンジニア兼翻訳家へ転進し,最後は幕末官軍の軍事最高ポジションまで務めた大村益次郎(村田蔵六)の話.教科書的に有名でもなく,人生のほとんどを地味に過ごした技術者がこれだけ豊かに生き生き描かれているのがこの小説のすごいところ.
中巻は,幕府直属校の教授職を辞めて長州へ戻るところから,軍事司令官として長州征伐の幕軍を撃退させるところまで.もともと医者でオランダ語ができることから軍事書の翻訳をやるようになり,流れ流れて長州の軍事司令官になっていく転進ぶりは読んでいて楽しい.また,桂小五郎に見いだされなかったら幕軍側の司令官になっていたかもしれないことを考えると幕末時代のちょっとしたタイミングや機微が浮き彫りにされていて面白い.上巻同様興味深いのは,彼の技術者としての応用力.馬には乗れないし剣術も全くダメで,銃や大砲の使い方にも詳しくないのに,軍略も軍事戦略も現実的に練り上げ,それがハズレなかったのは驚き.その背景にあった周到な調査と鋭い観察眼には圧倒される.
話の本筋から外れた歴史背景の話題もたくさん散りばめられていてそれが相変わらず面白い.流れ弾に当たらないように地面に這いながら小銃を撃つ(今では当たり前の)発砲スタイルが当時は奇妙に映ったとか,村田蔵六の思考と福沢諭吉の思考の違い,桂小五郎の人となりを深く掘り下げているところなどが印象的.
時代が求めた人物
(2003-01-03)
幕末~維新という時代において、技術者として生きることを時代から要請され、その通り生きた大村益次郎の生涯を描いた本の第2巻です。
幕末~維新とは、どういう時代であったのかをうかがい知ることができます。
また、京都に関連の深い人だったようで、京都のことが沢山出てくる点でも、京都人の私には面白かったです。
