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養老先生流の時評
(2008-08-29)
本書は、『中央公論』に連載していた時評を、新書のかたちで
一冊にまとめたものである。したがって、一冊を通してのまとまり
というのはない。
2003年の発売であるため、当時の時事問題について、養老先生流の
文調で次々に斬っていくのは読んでいて興味深い。
養老先生の本はこれで3冊目になるが、どれも筆者なりの「節」があり
それが人を惹きつけるのだろう。その文面からは筆者の知性と
頭のよさ、深い洞察力も感じることができる。
ただ、凡人である私は養老先生の本は時折深すぎて理解が届かないとき
もある。この本も、他の本同様、難しく感じる箇所もあった。
率直な意見
(2008-07-17)
解剖学の専門家である著者が経済的、政治的、社会的諸問題に対して、率直な意見を述べた時評集。その道の素人だからこそ言えるような過激な発言も含まれてはいるが、その正直な物言いには納得できる部分も多い。
中でも印象に残った部分をいくつか紹介する。
教養はものを識ることとは関係がない。やっぱり人の心がわかる心というしかないのである。それがいわば、日本風の教養の定義であろう。(中略)心こそ人類が共有するものなのである。(多頭の怪物の心がわかるか)
個性のあるのは身体で、頭にあるのは共通性だ。(中略)現代人は「私は私」、個性を持った同じ私だと信じて疑わない。「同じ」なら「変わらない」わけで、変わらないのは情報だから、自分は情報だというのが現代人なのである。(目的のない組織と個性のありか)
十九世紀以来の百五十年、科学は生きものを情報化すること、つまりイカをスルメにすることに専心してきた。(地球温暖化論に根拠はないが)
自分の専門分野のみならず、様々な問題に対して幅広く、率直かつ的確に自分の意見を述べれるようになりたいものだ。
真理は身も蓋もない
(2008-05-29)
環境が悪いとか、未来に希望が持てないとか
なんだかんだと少子化の理由を述べ立てるが・・・
本音は「子どもはいらない」と思っている人が
多いというだけではないのか?など
あまりにも直球なので、のけぞってしまうほどの
過激なメッセージが満載です。
私が、最も面白いと感じたのは日本人の特殊性について。
それは、死者を人と見なさない。という考え方。
死んだ人は人ではない・・・
こういった日本人の考え方の特殊性にもっと
自覚的にならないと、例えば中国とのイザコザは
絶えず生じるだろうと述べられています。
面白い
(2006-08-11)
本書は学問について、テロについて、政治について、虫について、家族問題についてのエッセイなど
を収めています。
養老氏のエッセイの面白いところはかつて問題になっていたことをしっかりと記憶しておりそれを
述べた上で現在の問題と比較しうる点だ。
かつてはエネルギー問題が話題になっていたり、家永裁判が問題になっていたりオウム問題だったり。
それらの風化していきつつある問題をきっちりと把握した上で論述をすすめていくので大変に説得力
がある。
そういえばNHKの報道も果たして中立か? ということは昨今珍しくもないが、前前から言いつづけて
いるのは彼だけである。
デネットという哲学者の書物に対するコメントも面白い
論点は「バカの壁」と一貫性アリ
(2006-01-03)
正直に言うと、この作品の内容は私にとってはやや難しかった。
きっとそれぞれのトピックを
理路整然と説明されておられるのだろうが、
話の内容が多岐にわたるために、
「何がいいたいのか」を読み捉えることに困難を感じた。
論点を整理すれば、この本の内容は「バカの壁」と大差ない。
私は養老さんの作品すべてを読破した訳ではないが、
彼の論点には、一貫性はあると思う。
額面通りに読んでしまうと、「あたりまえだ」とか、
「まとも」、「ふつう」という言葉の意味に
混乱が生じてしまう気がする。
しかしながら、人間の脳が作り出す事象や、
理解できる事柄には限界があるため、
「何事も額面どおりに解釈するには、
リスクが伴いますよ」という点を
読者と共有されたいのだろうと、
個人的にはそういう結論を出すことにした。
「バカの壁」と同様に新しい視点を与えてくれたが、
養老さんが有名になる前に主張されてこられた論点を、
名誉を得た今、「昔から論点を変えていない」ということを、
どこかの誰かに念を押したいのかと思わせるような
「個人的な欲求」も感じられた作品であった。
