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良質の思考実験
(2003-04-21)
本書は小泉首相の私的諮問機関「首相公選制を考える懇談会」の成果を纏めたものだ。近年、首相公選制が盛り上がりを見せた背景には、従来の政治への国民の不満がある。しかし首相公選制に改めるだけで政治が劇的に良くなるかというと、そうでもない。一つの制度は多くの制度との関連で成立している。下手をすれば一つだけ変えることで全体が機能不全に陥りかねない。制度は、一定のコンセプトから全体との関連を考慮して設計しなければ意味がないのだ。
以上の問題点を考慮しつつ本書は三つの試案を挙げる。改憲を前提に大統領制的発想で首相公選制を示唆する第1案、議院内閣制の枠組を維持しつつ一部改憲を視野に入れる第2案、現行憲法を前提に下位法制度と政治慣行の変更で現状の問題点を改善可能だ㡊??する第3案。
そして、第1案は久保文明氏 第2案は大石真氏、第3案は山口二郎氏と、三つの案にほぼ対応して三方が現行制度の問題点を論じている。ただ、改憲を言う論者も性急な改憲を提唱しているわけではない。立派な改憲案でも、現状では政治家と官僚の思惑と妥協により結果的にその改憲案が歪められる可能性が大だからだ。その意味で本書は思考実験の「素材の提供」(p192)に過ぎない。しかし本書は一流学者による優れた思考実験である。是非はともかく、統治制度の将来を考えるにあたり無視できない。
他に、全体総括する佐々木毅論文、首相公選制論史を纏めた加藤孔昭論文(本書はまずこの論文から読むと良いだろう)、イスラエル首相公選制失敗の経緯を報告した池田明史論文が収められている。こちらも参考になるだろう。
