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安倍の大きな「勘違い」を助長した俗悪本
(2007-10-29)
保守派の「プリンス」安倍晋三は、これ以上は考えられない「惨い辞め方」でわが日本を世界の笑いものにしてくれた。
日本人の健忘症は予想以上にひどく(それは「歴史認識」につながるというのが愚生の持論)もう、安倍内閣は「過去」の話になっているようだ。
だけど、安倍が首相の座にあった1年間に起きたこと、また彼のような人物が首相になった経緯についての「検証」は絶対に避けてはいけない問題である。
そういう書にはまだ出会っていないが、あえて本書を読んでみた。それは安倍内閣の「失敗」の大きな要素として、安倍自身が、またそれを取り巻く政治家・論客が安倍晋三という人物に関して大きな「勘違い」をしたことがあると思うから。
戦後生まれの「若い」首相とはいっても50歳を超えている。まともな人間ならば自分の「能力」について相当な自覚ができて当然の年齢である。が、この人は自らを「(肯定的な意味で)歴史に残る名宰相」になりうる存在と思ったようだ。
さて本書は、多数出た「安倍賞賛本」のひとつである。類書はたくさんあるから、また安倍がどの程度の「読書力」を持つかも知らないので安倍自身が読んだかどうかは分らない。だが、この手の本が安倍の「勘違い」の一因になったのは確かだと私は思う。
で、肝心の中身なのだが「気宇壮大にして空虚」である。吉田松陰・高杉晋作を、さらに祖父である岸信介を引き合いに出して、それらに匹敵する人物かのように安倍を持ち上げている。が、ここで展開される「歴史記述」はきわめて低レヴェルであって、ある程度に日本の近現代史を勉強した人はその独善性に苦笑するしかないものである。
この程度の本を読んで自らが「歴史に残る偉大な首相」になると確信する様を想像すると、喜劇を超えて大きな悲劇であろう。先の参院選では街頭演説で「安倍さ〜ん!」と叫ぶファンがいた。やはり国民に応じた「政治家」しか持てないという説は正しいと再確認した。
昭和史の勉強にもなります
(2006-05-14)
前半は祖父の岸信介と父の安倍晋太郎を介した昭和史に、出身地の長州から明治維新と重ねながら、展開します。
後半では三代目に引き継がれた、一本芯の通った「国のためにどうすべきか」という政治家にとって必要な信念が、安倍晋三に見られることを明らかにしていきます。一時期テレビにもよく出て、しかもわかりやすく説明してくれていましたが、なるほどそういった事情だったのかということが理解できました。
でも「国家は国民を守らなければならない」という当然のことを実行することが、いかに難しい国であるか。この人に期待をかけたくなりました。
すぐ読め情報価値高い上に、近代史の復習にも最適?
(2006-05-08)
本書『安倍晋三と「宰相の資格」』は、おそらく、朝日新聞などの戦後民主主義を信奉する勢力からは、「戦前回帰の意図を孕む偏狭なナショナリズムに貫かれた書」、あるいは、「現政権に擦り寄る御用伝記記者のプロパガンダにすぎぬ」、等々の批判をちょうだいするものだろう。つまり、本書はそれだけ(笑)、世界の政治の常識から見れば中庸を得た穏当な作品ということではないかと思った。
本書のモティーフは文字通り「宰相の資格とは何か」ということの考究であり;著者は、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三の政治家三代の生涯と半生を縦糸にして、長州(山口県)出身者を軸に据えて明治維新以降の日本の政治状況の展開、つまり、近代日本の政治諸課題の推移と解決を横糸にしながら本書を編み上げる中でこの主題に対する一つの<解>を明確に指し示しておられる。それは、国家がやるべきで、かつ、国家しかできないことを勇気をもって粘り強くやりぬく資質だ、と。大筋共感できた。そして、一読後、実に清々しい読後感を私は感じた。
